2015年に書いたストリートスナップと肖像権の記事、
おかげさまで長く読まれていますが、
さすがに10年以上経つと法律も判例の積み重ねも変わっています
2026年版として全面的に整理しました。
なお、この記事はプロカメラマンとしての実務経験をもとにした情報整理です。
個別のケースについては専門家へご相談をおすすめします。

肖像権侵害になる3つの目安
ちょっと待って、街で写真撮るだけで捕まるの?
極端に言えばそういう時代になってきた。2
015年に書いた記事があるんだけど、さすがに10年以上経って法律も変わってるので整理。
裁判例で重視されているのはこの3点。
- 顔や特徴から個人が特定できる
- 風景に偶然写り込んだのではなく、その人をメインで撮っている
- SNSやブログなど拡散性の高い場所に本人の許諾なく公開する
撮影した時点でアウトじゃないの?
撮影自体で成立するケースもあるけど、公開した時の損害賠償額に直結するのは「公開」の部分。
撮っただけで即逮捕というよりは、公開して問題になるケースがほとんど。
「顔さえ隠せばOK」は2026年では通用しない
ちなみに、顔さえ隠せばOKって思われがちだけど、2026年のネット特定能力を舐めちゃいけない。
学校の制服、社名入りの作業着、あるいは世界に一つだけのデコ車やペットのリードから、自宅や職場が特定されるほど特定班のスキルが上がったというか人が増えてる印象すらある。
知人が見て「あ、これ〇〇さんだ」とわかるレベルの属性は、法律上も特定性とみなされるリスクがあります。
法律の前にSNSに裁かれる時代

法律でセーフなら投稿してもいいんでしょ?
それが甘い。裁判所に行く前にプラットフォームの規約に裁かれる。
Instagram・X・TikTokのプライバシーポリシーは日本の法律より厳しい傾向にある。
法律上の肖像権侵害にならなくても、本人が不快に感じて通報した事実だけで
投稿が削除され、アカウントが制限されるケースが増えている。
アカウントBANってそんなに起きるの?
通報が重なると、これまでのフォロワーや投稿を全部失う。
法的にセーフかどうかより、相手が不快かどうかが実質的な判断基準になってきてる。
2023年に新設された「撮影罪」との違い
よく混同されるので整理。
- 肖像権(民事):プライバシー権に基づき、勝手に撮られたり公開されたりしない権利
- 撮影罪(刑事):2023年施行の「性的姿態撮影等処罰法」。下着や性的な部位の隠し撮りなど、明確な犯罪
ストリートスナップは撮影罪には当たらないってこと?
基本的には別の話。ただ、撮られた側が不快・怖いと感じた時点でトラブルの入り口になる。法律以前のマナーの問題でもある。

被写体別のセーフ・アウト判断
子供の撮影(特に注意)
子供が背景に入ってたらダメなの?
大人以上に厳格に扱うのが2026年のプロのスタンダード。
たとえ風景の一部でも、保護者からの削除要請があればプラットフォームは即応する。顔を特定できない処理が事実上必須。
鎌倉方面だと子供を撮影したではなく、カメラを持っている人が子供の周りにいたで不審者通報があったと当時Twitterが話題になってたことも。
車・ペット(動産)の撮影
高級車とかペットを撮るのは?
車やペットには肖像権はない。撮影自体は問題ない。
ただしナンバープレートや迷子札の電話番号が写り込むと住所特定につながってプライバシー権の侵害になる。
公開時はモザイクを入れておく。
肖像権をクリアする現実的な方法
じゃあストリートスナップって実質無理じゃない?
っという場合のいくつか方法を。
① 友人やモデルと一緒に撮る
これが一番クリーン。
シチュエーションだけ街に設定して、スナップのように演出する方法。
背景に映り込む他人は後ろ姿になるよう立ち位置を調整する。

② 撮影技術で「特定」を避ける

ぼかしたりスローシャッターでブラすのってリーガル的にどうなの?
判例の基準は「個人を特定できるか」が軸。
顔が特定できない状態になっていればセーフラインに近いです。
ただ「意図的にその人物を撮っている」という撮影目的の部分は残るので、
あくまで特定不可能な状態が前提。
- スローシャッター(1/30〜1/15)で人物をブラす:歩行者が流れて顔が特定不可能な状態になればセーフライン寄り
- 後ろ姿・シルエット・手元など顔を写さない構図:第三者が見て個人を特定できなければ肖像権の問題が生じにくい
- 大口径レンズで背景をボカす:人物を「色彩の一部」として処理する
- 超広角で人物を極小に写す:都市風景のアクセントとして扱う
③ 不特定多数の群衆として撮る
不特定多数が写ってて、主題が特定人物じゃない場合は?
これは肖像権の判断基準3つをほぼクリアしてる。
| 基準 | 状態 | 判定 |
|---|---|---|
| 個人の特定性 | 不特定多数の中の一人 | ◎ |
| 被写体のメイン性 | 主題として認識できない | ◎ |
| 公開の態様 | ブログ・SNS掲載 | △(ここだけ残る) |
渋谷スクランブル交差点みたいな写真は完全にセーフ?
あれは教科書的なセーフケース。
誰が主題かわからない、特定できない、公共の場、この3つが揃ってる。
スローシャッターで流してればさらに盤石。
④ Photoshop・AIで後処理する
撮影後の処理でも有効。
写り込んだ人物を特定できない状態にすることは法律専門家も推奨している予防策。
- モザイク・ガウスぼかし:古典的だが確実
- 生成塗りつぶしで実在しない顔に置換:Photoshopの生成AI機能で通行人の顔を存在しない別人に差し替える手法が2026年現在普及している。
作品の雰囲気を壊さずに肖像権問題を回避できる
⑤ 事前に声をかけて許可を取る(最強のクリーン解)

コミュ障には高いハードルだけど、これが一番確実。声をかけて撮った写真は肖像権的に完全クリーン。

事前許可なしで撮って問題になった事例は2015年当時からすでに存在していた。
2026年現在はSNSでの拡散速度が当時の比ではないため、リスクはさらに上がっている。
「消してほしい」と言われたときの対応
現場やDMで削除要請が来たらどうするの?
法的にセーフでも即対応が正解。理由は3つ。
- 即謝罪・即削除:「表現の自由」を主張して争うのは時間・精神・評判のコストが見合わない
- 相手を刺激しない:「削除しました」と証拠を示して誠実に対応することで炎上を未然に防ぐ
- アカウント保全を優先:通報が重なるとこれまでのフォロワーや投稿を全部失う
現場で声をかけられたら、まずカメラの液晶でその場で消去する。
SNSなら「申し訳ありません、即座に削除いたしました」と一歩引いた対応が最強の防御。正論を吐くより迅速な対応でリスクを消し込むほうが賢い。
建物の著作権と施設管理権
ビルとか有名な建物も撮っちゃダメって聞いたけど。
著作権法第46条で、一般公開されている建物の外観は原則撮影・公開できる。
ただし施設管理権は別の話。
- 公道から撮る:基本OK。三脚で通行妨害すると道路交通法に引っかかる場合がある
- 六本木ヒルズ・東京国際フォーラムなど:敷地内に入った時点で管理者のルールが適用される。
商用撮影禁止の場所で撮った写真は公開差し止めを求められる可能性がある - 駅・ショッピングモールなど「公共性が高いが私有地」:鉄道会社や商業施設の管理権が優先される。長時間の占有や三脚使用はほぼ確実に止められる
外から見えてても敷地内はアウトなんだ。
外観を写したのか、施設内で撮ったのかで扱いが変わる。
複数のビルを街として撮った場合はグレーゾーンとされることが多い。
東京タワー・スカイツリーは著作権と商標権が別の話
東京タワーやスカイツリーをバックに人が入ってる写真ってセーフなの?
人物の肖像権の話と建物の権利の話は別で考える必要がある。
まず著作権について。著作権法第46条により、
一般公開されている建物の外観は原則として自由に撮影・利用できる。
商用利用でも同じ。
写真を撮ること自体は著作権上ほぼ問題ない。
ただし著作権とは別に商標権がある。
東京タワー・スカイツリーは名称だけでなく、
建物のシルエットや立体形状も商標登録されている。
商標権があると何がアウトになるの?
商標的使用かどうかが基準。
営業上の信用にただ乗りするような使い方かどうか、という判断になる。
「記念写真の範囲はセーフ、販売はアウト」という整理がわかりやすい?!
| 用途 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| SNS個人投稿(背景に写り込み) | ◎ | 商標的使用に当たらない |
| 旅行の記念写真(個人利用) | ◎ | 商標的使用に当たらない |
| ブログ記事の挿し写真(背景扱い) | ○ | 主題でなければグレー寄りセーフ |
| スカイツリーをどんと主題に1枚でストック販売 | △〜✕ | 運営側が事務局許諾なしの使用を禁じると明記 |
| 夜間ライトアップを主題にストック販売 | ✕ | 商標権・著作権の両方がかかる |
スカイツリーが背景に入ってる不特定多数の群衆写真をストックに出すのは?
メインとして撮っているのでなければ許容されるというのが法律専門家の見解。
ただしグレーは残る。
ストックサービス側の規約も別途確認が必要。
まとめ:セーフ・グレー・アウト一覧
| シチュエーション | 肖像権 | 建物権利 | 総合 |
|---|---|---|---|
| 渋谷スクランブルなど群衆を風景として撮る | ◎ | ◎ | ◎ セーフ |
| スローシャッターで人物をブラして特定不可に | ◎ | ◎ | ◎ セーフ |
| 後ろ姿・シルエットのみ | ◎ | ◎ | ◎ セーフ |
| Photoshop・AIでぼかし・顔置換して特定不可に | ◎ | ◎ | ◎ セーフ |
| 昼の東京タワー×群衆(背景扱い) | ◎ | ◎ | ◎ セーフ |
| 子供が写り込んでいる(顔が特定できる) | △〜✕ | — | △ 要配慮・NG推奨 |
| 夜の東京タワー×群衆(背景扱い) | ◎ | △ | △ グレー |
| 顔がはっきり写った一人をメインに街撮り→SNS公開 | △〜✕ | ◎ | △〜✕ |
| 夜の東京タワー×特定人物どんと1枚→ストック販売 | △〜✕ | ✕ | ✕ アウト寄り |
| 許可なく特定個人をSNSに公開 | ✕ | — | ✕ アウト |
声をかけて許可を取るのが一番確実。それが難しければ、構図・機材・ポスト処理を組み合わせてクリーンな状態にする。
法律は今後も変わり続けるので「昔はOKだった」を判断基準にしないほうがいい。
